冬季ソロ登山のエキスパートは、下山後にどんな反省をして、次のチャレンジにどう生かしてきたのか。厳冬期のアラスカで20年以上も冒険を続けた栗秋氏が、2007年に世界初のフォレイカー冬季単独登頂を達成したときの詳細なメモをもとに、冒険家のリアルな「反省点リスト」を特別公開します――《閑人堂主人》
反省ノート①食料
即席ごはんのミニッツライスとマウンテンハウスの乾燥具材(肉類、野菜類)にカレー粉を入れて作るドライカレーはなかなかうまい! カレー粉のかわりにシチューやミートソースの素など、各種の粉末・固形ソースを使えばメニューも大幅に増えるので汎用性が高い。なお、ミニッツライスは約2キロ入りの大箱を、マウンテンハウスの乾燥具材は約3.5リットルの大缶入りをそれぞれ複数購入するので、1食あたりの費用も抑えることができる。
コストコやウォルマート、セーフウェイなどアラスカの店で手に入るビーフ、ポーク、ターキーなどのジャーキー各種をいろいろと試してきた。今回、フレッドマイヤーで購入したプライベートブランド(?)のビーフジャーキーのオリジナル味はじつにうまい。ほかにテリヤキ味やスパイシー味もあるが、ビーフの旨みがダイレクトに味わえて、しかも低温でも軟らかいオリジナル味がこれまででベストだ!
井村屋の袋入りおしるこは、前もって空気を抜いておかないと気圧の関係で膨らんでかさばる。なかには破裂したものまであった。ひと袋ずつハサミを入れて穴あけするのは面倒だが、これにより解決した。
深夜に即席ラーメンなどを食べた場合、朝食のラーメン1.5人分の量は多いかもしれない。朝食はラーメン1人分に高野豆腐や具材を増やすという手もある。また高所のキャンプでは米やパスタ、ラーメンなど炭水化物の量を減らしてみてもいいかもしれない。もう20代のときのような食べ方はできない。
行動食の定番にしているカロリーメイトのブロックタイプは、軽量なわりに高カロリーで栄養バランスも申し分ないのだが、やはり行動中はのどが渇いてしまう。ナッツやチョコレートなどは行動食としていけるが、カロリーメイトは停滞時のティータイムやキャンプ内での昼食に向いているかもしれない。
足先が冷えて麻痺しているときもあるのに、しもやけにもならないのはなぜなのか? 過去の経験からすると、今回しもやけになっていてもおかしくないのだが……。いつも以上にあえてダウンの上下を着て体幹部分をできるだけ冷やさないようにしていたからなのか? あるいはバターなどの動物性脂肪をこれまでより多く摂取していたため、結果的に体の内側から温めていることにつながるからなのか?
上に書いたような登山中の食事ではビタミンやミネラルが不足するので、ネイチャーメイドのマルチビタミン&ミネラルやカルシウムを持参している。それぞれ1日2粒が目安なので、70日分だと総量がおよそ260グラム、マグカップに山盛り1杯の大きさにしかならないが、やはり高所にいくと紙1枚の重さでも気になってしまう。よく食べ、よく寝て、人的ストレス(?)も皆無だからなのか、じつはこれまで冬のアラスカ単独行でひどい口内炎などになった記憶がない。乾燥具材の野菜類やドライフルーツなどからでもいくぶん栄養を補うことができているとしたら、各ビタミン剤を半分の1日1粒に減らせるかもしれない。
下痢の原因になるかもしれないため、水を作る際は水質に注意すること。とくに今回はキャンプ1(C1)などで砂のようなものが混入することもあった。また、C3でお湯を作ったとき、酸性雨ならぬ酸性雪なのか(?)炭酸水のようにやたらシュワシュワと泡がでて沸騰した。あやしい水と思ったら、まずはビオフェルミンなどの整腸剤を飲むこと。それでも効かない場合はロペミンなどの下痢止め薬をすぐに服用すること! なお、水道水から氷河の水にお腹を慣らすため、入山して少なくとも1週間はあえて整腸剤を飲んでいる。
栗秋正寿
登山家。1972年生まれ。1998年に史上最年少でデナリ冬季単独登頂。下山後、リヤカーを引いてアラスカの南北1400キロを徒歩縦断。2007年、世界初のフォレイカー冬季単独登頂に成功。2011年に第15回植村直己冒険賞を受賞。20年以上アラスカの山に挑み続け、冬の単独行は合計16回、延べ846日。趣味は川柳、釣り、ハーモニカとピアノの演奏、作曲。